ムーブプラクティス

外岩ロープルート、ジムボルダー課題等々、何かしら新しい課題に取り組み、あるセクションのムーブを起す場合、

① 重力やホールドの方向やその荷重を感じながら、体が自然に反応して、ムーブをこなしてしまう。

そんなムーブをどれだけ蓄積するかがポテンシャルを高めることだと思う。一方で、そうでない自分にとって難しいムーブに出くわした場合は、

② 経験を元に理論的にムーブを考え、思考錯誤してムーブをできるようにしていく。

こちらがRPへのプロセスであって、新しいムーブを学習していくために必要なプロセスなのだろう。持久力的要素のあるルートの場合は、さらにそれを洗練させるプロセスが発生するのは言うまでもない。上記①のような自分にとって簡単なムーブは経験的な蓄積の中にあって、早くムーブができたり解決するわけだが。そうではない経験していない難しいムーブを解決するには、やはり、大脳による考察が必要だと思うのだ。そのプロセスは誰もがやっていることだと思うのだが。どうやって、ムーブを解決し学習していくのか文章にして整理することを試みてみようと思った。難しいムーブとは、基本的な原理に基づく基本の動きがあって、その複数の基本の動きを同時に実行しなければならないので難しいのだと思うのだ。例えば。
(1) 左手左足を軸にして、右手を出す二軸系の動作。
(2) 左手はサイドプル持ちしかできないので、体の右側がドアオープンしてしまうことを防ぐために、右足ヒールフックで補う。
それぞれの基本動作は難しくないのだが、その二つの基本動作を同時にそれぞれの力加減で実行する必要があるために、難しくなっているのだと考える。クライマーはこれを小脳で学習し、自動化することで、この複雑な動き(ムーブ)を実現していく必要がある。まずは、理論的に大脳で理解する。だが、その理論的なことを考えながら、筋肉をリアルタイムでスムーズに動かすことは不可能だ。大脳はそんなに高速な処理ができないからだ。だから、クライマーは小脳に一連の動作(ムーブ)を記憶させる必要がある。大脳で考えた理論的に解明した動きを小脳で自動化することがゴールなのである。それをスムーズにブリッジするためにには何が必要なのだろうか。その一つは、「ムーブのイメージ」が大脳と小脳を仲介するのだと思う。とても漠然なのだが、例えば、「左手サイド引きしながら、右足ヒールで引きながら、重心は少し左より、左手左足に軸があって、右足でドアオープンするのを防ぎながら、スーと伸びて右手出す。」そのイメージとは、「少し右方向にヒールへ乗り込むように体をあのあたりへほうりこむ。」そんなイメージをしながら、ムーブを試行してみる。そして失敗する。ヒールへ乗り込もうとすると、左手左足軸から左手右足軸へ移るのだが、右足ヒールがよくないのでヒールがはずれて失敗する。そして、体の動きの記憶をフィードバックしながら、今度は、もっと重心を左軸へよせて、腰をもっと壁に近づけて、寄せて寄せてデッドと試行してみる。そんなことを繰り返しながら、ついには、そのセクションが成功する。成功した連動動作を小脳が記憶する。その記憶はイメージと一緒に連想記憶されるので、そのイメージを持ってムーブを起そうとすれば、その連動動作プログラムが記憶からスムーズに引き出される。成功してからも、より楽にするにはどうしたらいいか、フィードバックしながら、さらに試行してムーブプログラムを成熟させる。未知のムーブを作っていくというのは、まずは、最もシンプルな基本的なムーブの原理があって、その複数を同時に組み合わせることで組み立て、その複数の動きを同時にスムーズに実現していくということだと思うのだ。さらに難しいムーブは、もっと多数の基本動作を同時に実行することになるのだと思う。さらにフィジカルにそのムーブができるか否かという要素も加わる。そのプロセスで重要なのは「体の動きのイメージ」。それは、観の目のように自分を別の自分が後ろから見ているように、イメージするのかもしれない。どういう方法がいいのかは、人それぞれ違うと思うのだが、整理する意味で、自分のプロセスをスペルアウトして整理してみた。

きん
by climber-kin | 2009-04-06 22:20 | クライミングの研究 | Comments(0)

 弱いわりには頑張っている、還暦を迎えた初老クライマー。体力と気力の衰えを感じながらも、13を10本!を登りたいなぁ。12以上100本も達成したいな。を目標にがんばっている日々を綴るクライミング日記。でも、最近はハイキングと沢登りばかりです。


by ヘビークライマーきん