パンプ

ルート解説に、「パンプに耐えて登り切る!」とか表現されている課題をたまに目にします。ところで、そんな状況で登れたルートは、どのくらいあるのでしょうか。実際には、RPできない時は確かにパンプして力が入らなくなって登れないことが多いでしょう。だけど、RPできた時は、私を含めて多くの人はパンプなど感じないで登れてしまったことが殆どではないでしょうか。私の記憶で、パンプアップして、ぎりぎりの瀬戸際で登れたルートと言えば、以下のルートがあります。
(1) モンスターパニック(12b)
・最後の数手。傾斜が弱くなったところで、カンテ側へ体を入れ込んで、荷重をなくせたので、パンプしていても、終了点にクリップできた。
(2) SVP(12b)
・7p目クリップしたところで、猛烈なパンプが襲ってきて、8p目クリップ。ガバへの座り込みレストは、ぎりぎり間に合った。
(3) ビックプレゼント(12b)
・レストしているうちに、足がだるくなってしまって、気が付いたら腕がパンプ寸前だった。あわてて最後のセクションをパンプしたままこなした。何とかセーフ。
(4) 用心棒(12b)
・核心越えて、ガバでもたいして回復できず。パンプしそうでパンプしない平行線のまま終了点までたどりついた。

この4つぐらいしか記憶にありません。殆どのルートはムーブの最適化と自動化でパンプなんてしないで、ある意味余裕で終了点に達しています。先日RPできた、ボルダーの持久力ルートと解説されている「海賊船」も全くパンプなんてしませんでした。だから何とか濡れたテラスでもはい上がれたのだと思います。以上の4つのルートも、パンプしていても、最後がたまたま優しいセクションだったのでフォールしないでこなせているだけでしょう。そうなんです。パンプしていたら、ジムの3級ムーブぐらいの核心なんて絶対にこなせません。4級?5級?6級のムーブも危ないでしょう。つまり、パンプしたら終わりということなんだと思います。即ち、「RPするには、パンプする前に終了点に到達すること!」または「いかに疲れないで核心へ到達するか!」と言うことではないでしょうか。もう一つ言うなら「パンプしそうになっても、ルートの途中でレストで回復できること」でしょう。そのためには、ムーブの最適化と自動化をするために、そのルートに何便も出すわけです。パンプしてから何手伸ばせるかを要求されるのはコンペぐらいなのではないでしょうか。我々もオンサイトトライで、後一手でガバとかレストポイントとか。壁の中でムーブを見つけるとか。たまに、そんな状況になることがあるかもしれません。そのような観点で考えると、RPによる完登を目的としたクライマーがフィジカルな筋持久力トレーニングに長時間かけるのは、それは、あまりありえない状況のために時間を費やしているような気もしてしまいます。それでは、RPクライマーが目的ルートをパンプする前に登り切るには、何が必要でしょうか。
(1) できる限り力のいらない適したムーブで登る。(ムーブの蓄積とムーブ解析能力。ムーブの自動化。)
(2) 前腕や指の力を使わないで登る。(背筋、腹筋、体幹、足の力で登る。)
(3) ムーブに余裕を持たせてダメージを減らす。(核心ムーブを簡単に感じるようにする。ムーブ力をつける。言い換えるとボルダー能力を高める。)
(4) 効率的なエネルギーでムーブを繋げる。(流れるような動きで登る。)
つまり技術です。ヘボな私が言うのも何ですが、スキルです。平日に時間のない我々は、フィジカルな筋持久力的なトレーニングより、技術的(テクニカルな持久力)なトレーニングにより多くの時間を費やすべきだと思うのでした。何やってたって、毎週登っていれば、必要な筋持久力は自然についてきます。それでも、筋持久力をさらにつけたいなら、とても難しいムーブがずっと連続する長手もの課題で落ちても落ちても、休まずに続けて繰り返す。その方が効果があるように思います。だから、上記のような技術を向上させるために、長もの課題やルートをたくさん登るというが正しい表現なのかもしれません。それを持久力トレーニングと表現されると、違うんじゃないかなぁと思ってしまいます。目的をクリアにしてトレーニングした方が効果が高いように思います。私は、おもしろくない筋持久力トレーニングをしたくないので、それを正当化しようとして、視点を変えて、かなり振り切った見方で書き下してみました。問題提議的な意味で。どうなんでしょう。

きん
Commented by こーたろー at 2009-06-27 05:19 x
きんのアニキ 確かにそうだなぁ。パンプしてギリギリで完登なんてのはめったにねぇな。最近、限界グレードのオンサイトトライってぇのをしてねぇからなおさらだろうけどな。
それと、最近練習の時間をなかなかとれねぇから、ジムに行っても動きを忘れないように優しめのを丁寧に登っているだけなんだよ。短い時間でもボルダした方がステップアップには良いと思ってるんだけど中々できてないねぇ。
Commented by climber-kin at 2009-06-28 00:35
兄弟、結局、みんな好きな方をやっちまうんじゃねぇかなー?まぁ、楽しみながら、やらないとな。
Commented by JILL@ at 2009-06-29 23:17 x
こんばんは。きんさんのおっしゃるとおりだと思います。これらを上手く活用し、チョイスしながら、その人の筋肉の質や、体質、トレーニング環境、または、トライしているあるいはトライしようとしているルート(課題)のタイプという諸条件も加わるかなと思います。自分はどちらかというとルートでの登り込みに主眼を置いて取り組んでいます。これまでいろいろ試してきて行き着いた結果です。もちろんこれ以外にももっと効果的な方法はあるのではないかと思いますが、年齢的なことの考えての現時点での結論です。つまり、言い尽くされてはいますが、その人にあったトレーニング方法と、RPへの過程を確立していくことがきんさんのおっしゃる“パンプに耐えて”につながるのではないでしょうか?これは否定的な見解ではなく、あくまでの私個人としてという見解です。この2年間ほどで明らかに進化を実感できています。残念ながらルートでの成果はまだまだ少ないですが…
Commented by climber-kin at 2009-06-30 00:18
JILL師匠、コメントありがとうございます。そうですね。トライしたいルート(課題)のタイプによって、かなりトレーニング内容は異なるはずですね。個人差も大きいですね。クライマーでも種族はかなり多様に多いですよね。トライしたいルートと自分の向き不向きが必ずしも一致しないのが悩みの一つでもあるのですが。私の場合は毎週外岩ルート登りにいってるので、平日はボルダー中心にしてもバランスが取れているのだと思います。
より効果的な方法の候補の一つとしては、期間(3ヶ月ぐらい)を決めて、ボルダー系とエンデュランス系。それぞれ期間限定して集中してトレーニングすると効果が高いようです。昨年の1月は1ヶ月間外岩いけず。ボルダーばかりやっていたら、やはりボルダー強くなりました。若者達がボルダーすぐ強くなるのは、週に3回以上ボルダーやってるからだと思います。一方で、長く同じトレーニング(刺激)を継続するとその効果が落ちてくるのが定説のようです。よって、期間を限定してテーマを変えていくのが、より効果的なのかもしれません。やってみたいのですが、なかなか実践できていないですが。
Commented by ゆきしmあ at 2016-08-24 15:22 x
こんにちは。検索から辿り着き、度々拝見させて頂いております。
当方、40の子持ちクライマーですが12aの手前で本数を出せない、粘れないことが課題でして悩ましい限りです。ご考察興味深く拝読し、色々と勉強させて頂いております。是非引き続き研究下さいね。
尚、コブは知り合いで何人かの方は岩場お会いしたことあります。
きん、さんにもどこかでお会いできると嬉しいです。
Commented by Climber-Kin at 2016-08-24 17:11
ゆきしまさま、コメントありがとうございます。12a前後が一番楽しい時です。大いに悩み、研究し、いろいろと試しては、自分に合った登り方とトレーニング方法を見つけてください。岩場でプロレスラーみないなのがいたら私です(笑)。こちらこそ、宜しくお願いいたします。
by climber-kin | 2009-06-25 20:39 | クライミングの研究 | Comments(6)

 弱いわりには頑張っている、還暦を迎えた初老クライマー。体力と気力の衰えを感じながらも、13を10本!を登りたいなぁ。12以上100本も達成したいな。を目標にがんばっている日々を綴るクライミング日記。でも、最近はハイキングと沢登りばかりです。


by ヘビークライマーきん