2015年6月6日、湯檜曽川流域・東黒沢~ウツボギ沢~宝川・ナルミズ沢(撤退)

「あまりに早過ぎた沢登り」

 ここ数年、20数年ぶり?に日帰りの沢登りを再開してきている。今年の夏は大きな沢へ入ろうと計画している。その前に、泊まりの沢を経験しておきたい。そこで、我々はナルミズ沢を思いついた。パートナーさまは、20年前に、諸般の事情で登れなかったという思い入れがあるようだ。ちょっと早いかなぁとは感じていたのだが、小川山屋根岩から見える金峰山の雪はすっかり融けていた。5月から夏のような暑い日が続いていた。すっかり、夏の気分だった。
 どうせ登るなら、一度で二度楽しめる2本の沢をつないでみよう。白毛門沢・東黒沢から入り、武能岳コルを越え、ウツボギ沢を下り、ナルミズ沢へ入る予定としたのだった。泊まりの沢なんて、最後に奥利根本谷を25年ぐらい前に遡行した以来ではないだろうか。技術的には、あまり心配していないのだが、体力と沢での生活力が心配だった。やはり、北アルプスの大きな沢へ入る前に一度は行っておかなければ。幸いにも、梅雨前にチャンスは訪れた。土曜日は朝から雨がやみ、日曜日は晴れの予報になった。わくわくしながら、上越道を北上した。谷川岳が見えてきた。うっ、残雪が多いぞ。ちょっと嫌な予感をしながら、土合橋駐車場に到着した。

(1) 土合橋駐車場出発、7:10
・パッキングに手間取り、予定より10分遅れで出発した。

(2) ハナゲの滝手前
・いきなり、でかい雪渓が出てきた。雪渓の右側から巻こうとしたら、上にしっかりとした巻道があった。
・この雪渓は例年、夏まで残る雪渓なのだろうか?

〇 突然現れた雪渓
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(3) ハナゲの滝、8:00
・ブログや記録で見た写真より、水量が随分多い。
・途中から左へ入り、しっかりした巻道で巻く。
・沢へ戻ったところで、また、かなり大きな雪渓が現れる。
・少し考える。とりあえず、その先がどうなっているかを見て決めよう。
・雪渓はずっと続いていた。途中で左から右へ移らなければならないところがあった。「戻ろう!」そう思った。
・振り返ると、パートナーさまが「1時間足らずで、まさか敗退するんじゃないんだろなぁ」という表情でこっちを見ていた。
・もう少し先へ行ってみることにした。フェルトシューズで雪渓登りは辛い。バイルかピッケルでも持っていれば、心強いのだが。
・ストック変わりになる枝を探したが、なかなかよいのがなかった。
・一度雪渓が途切れたか、再び大きな雪渓が現れた。

〇 ハナゲの滝
・他の記録と比較すると、やっぱり水量はかなり多い(追記)。
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〇 再び雪渓が現れる
・バイル持ってきてないし、フェルトは滑るし。
・戻ろうよ~。有笠山でクライミングしようよ~。
・えっ、行くの?


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〇 雪渓が抜けそう!
・ここ越えたら、もう戻ってこれないような。
・あー、後でわかった。これは玉子岩だ(追記)。
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(4) 白毛門沢出合、8:30
・雪渓の上を恐る恐るも進みながら、白毛門沢出合に到着したようだ。
・白毛門沢側は完全に雪渓にうまっていた。
・一方、東黒沢側は雪渓がしばらくないようだった。
・ここからは、雪渓がなく順調だった。次から次と現れるナメ底、ナメ滝を越えていく。
・途中小さな雪渓に出くわすが、そこは、くぐって、通過できた。

〇 雪渓はなくなり快適になる
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〇 小さい雪渓
・下からくぐる。
・そのシルエットが見えます。黒い影は私です。
・ザック傾けて前進。腰痛い!
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〇 快適に遡行中
・雪がなければねぇ。
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(5) 金山沢出合、9:40
・雪渓がなくなり、快適だった。

〇 金山沢出合
・安堵が続きます。雪渓が消えました。
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〇 雪渓がなく快適な遡行が続く
・来てよかった~?
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〇 ナメ、ナメ、ナメ滝の連続
・幸せは、もうしばらく続きます。
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〇 まだまだ続くナメ
・陽が少しだけでてきて、心もなごみます。
・しかし、その後、また雨が強くなってきました。そして、この直後に試練が再び、待ち受けます。
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(6) 間違えやすい二俣
・雨が強くなってきた。
・ここで右へ入ると武能岳へ突き上げてしまうらしい。
・iPhoneの地図でGPSで確認して左へ入る。
・確かに右俣の方が沢底が低い気がする。

(7) 間違えたと思われる奥の二俣、10:50
・再び雪渓が現れた。
・左俣は雪渓に覆われ、傾斜がきつく見えた。
・右俣は雪渓が途絶えていた。
・迷わず、右俣へ入った。左俣の急な雪渓を登るなんでありえない気がした。
・結果的にここは左俣が正しかったようだ。間違って右へ入った。しかし、コルに到達してから見た、その正しかったであろう沢筋のべったりとはりついた雪渓具合から、アイゼン、ピッケルを持っていない我々が、その正しいラインを登れたかどうか?は疑問だった。もしかしたら、間違えたゆえにコルまで到達できたのかもしれない。
・傾斜が緩くなっていくはずが、どんどん傾斜が強くなっていった。武能岳へ向かっていくことがわかった。高度的にはもうコルより高い。
・藪漕ぎで、300m~400mぐらいトラバースしただろうか。ようやく、コルに到着できた。

〇 また現れた雪渓
・しかも、今度は融けて、やせ細ってる。
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〇 ドボン
・やっぱり、雪渓を踏み抜きました。
・幸いに、怪我はありませんでした。
・上の方に、踏み抜いた雪渓から出てくる私がぼんやり写ってます。
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(8) 武能岳コル、13:00
・コルには到着したのだが、当然嫌な予感がした。このまま宝川へ降りてよいのだろうか?しかし、東黒沢を戻るのも考え辛い。
・気持ちを決めて、宝川側へ下降しだした。だが、その心配はすぐに現れた。しばらく下ると、沢は雪渓に覆いつくされていた。
・やっかいなことに、たまに穴を開けながら。
・何か所か懸垂下降して、雪渓から沢底へ降りる。そして、また、雪渓に上がる。
・強くなりだした雨の中、凍りつきそうなロープで、手はかじかみ、ロープさばきが、うまくできない。ロープには雪が絡んでくる。膝下まで水にしたる。
・これが何時間も続いたら、もしかしたら、このまま体力が尽きて…。少し頭の中をよぎった。
・下るにつれて、少し傾斜が緩くなり、巻きやすくなってきた。助かった。
・左側からウツボギ沢が近づいてくるのが見えた。

〇 下り開始
・いつ滑落しても、おかしくないフェルトシューズ、腰が引けます。
・滑落始まったら、これで止められるとは思えない、あまり意味がないのでしょうけど、とりあえず、落ちていた枝をお守りに持っています。
・雪渓の上は、杖になるような立派な枝は落ちていませんでした。
・武能岳コル、丸山乗っ越しから、白毛門岳へ抜けるエスケープがあったのかも。2キロ。(追記)
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〇 懸垂で沢へ下降
・一番やりたくなかった場面。これで体が冷え切りました。
・ここから、全く余裕がなくなり、これ以降、写真を撮れていません。
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(9) ウツボギ沢
・回りは雪渓だらけだが、しっかり水が流れていた。
・膝ぐらいの水の中を宝川の出合まで下った。
・体が、冷え切った。

(10) 宝川・ウツボギ沢出合、広河原、14:30
・ナルミズ沢を見上げると、雪渓で埋め尽くされていた。
・大石沢出合まで登山道を進み、ビバーグして、翌日、朝日岳へ登り、下山するという案もあった。
・しかし、今からなら、宝川温泉に暗くなる前に到着できるだろうと、宝川温泉への登山道を下ることにした。

〇 下山する登山道から見下ろす宝川
・すごい迫力なんですけど。これ渡渉するの?
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(11) 渡渉点、15:00
・しばし、安堵しながら進んでいたのだが、宝川の状態をたまに目にしながら、嫌な予感がした。
・この登山道には渡渉点があるのだ。
・そして、渡渉点が目に入ると、パートナーさまは絶対に渡れないと叫んでいた。その下流にある、あの雪渓部分なら渡れると言い出した。ここまで来て、絶望的な渡渉を目の前にしてしまい、少しパニック気味だった。
・その雪渓を見た。トラバース中に傾斜のある雪渓を滑って行き、水流へ落ちていく。そのまま轟音の流水とともに、雪渓の中へ吸い込まれていく自分の姿を想像してしまった。やめてくれ~!
・ちょっと見てくると渡渉ポイントの水際でよく観察した。これなら行ける! 黒部川上の廊下とかに比べればかわいいものだ。今はちょっと体が冷えていて辛いだけ。
・ロープを出し、ビレイしてもらいながら、渡渉を始める。最初のうちは大丈夫だったが、向こう岸への最後2mが少し厳しかった。水流の中の大き目の石を手で押さえて、渡渉に成功した。
・上流側からビレイしながら、パートナーさまにも渡渉してもらった。バランスをくずして、首まで水につかる場面もあったが、上側からロープ引いているので絶対大丈夫だろう。実は、その前に、パートナーさまが真っ青になるハプニングが、もう一つあったのだが…。
・ところが、まだ安堵できなかった。登山道はところどころ崩れていて、疲れきった足にはとてもきつかった。

(12) 宝川温泉、18:50
・宝川温泉に到着したのは、水上行最終バスが出たところだった。
・お風呂も17:00には終了だった。水上タクシーに問い合わせてもらったが、今日はタクシーが一台しかなく、しかも、これから上毛まで連れて行く客がいるとにこと。あ~。
・見るにみかねた宝川山荘の管理人さんが、時間外に内風呂に入れてくれた上に、土合橋まで車で送ってくれた。本当に助かりました。

 上越方面のこの時期の沢の認識が甘かったです。確かに、昔沢登りしていたころでも、この時期に沢へ入ったことはありませんでした。5月まで山スキーしていたのに、6月から沢登り?は確かにありえませんでした。小川山から見ていた金峰山と一緒にしていました。小川山あたりは冬型が崩れると雪が降り、上越、北アルプス方面は冬型の時に雪が降る。今年は冬型の天気が多かったのですね。
 久々の大冒険でした。運もよかったのでしょう。途中危ない場面もなんとかこなせて無事下山できました。よかったよかった。でも反省点が多数でした。それにしても、久々の12時間行動で疲れ切りましたが、充実感を感じてしまいました。

〇 翌日(追記)
・ナルミズ沢自体は、遡行せずに土曜日に敗退してきてしまったので、日曜日は突如、暇になってしまいました。ところが天気は快晴です。
・しかし、体中バキバキで、クライミングする元気はありませんでした。
・思いついたのが、一の倉沢までハイキングでした。久々に見た一の倉沢はあいかわらずの迫力でした。
・ここを登っていたのも、20年以上前か。懐かしかったです。
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〇 今後の沢登りのために(追記)
(1) 服装
・Fine TrackのW1+W3の上下を持って行ったのだが、最初、上はW3を着ないで、よかれと思って着ていた化繊の半袖Tシャツは水を吸って、寒さを増していただけのような気がする。上は寒くなってから化繊Tシャツを脱いで、W3を着たのだが、これは温かった。早くきればよかった。
・今回ビバーグはしなかったが、下記のたき火ができれば、Fine Trackが乾いて快適になるのだろうけど、たき火できない場合、寝る時に寒い場合雨具下を履けばよいかと考えていたが、もっと確実に温かいものはないだろうか? 今回、本当に体が冷え切ってしまった。ちょっと心配になってしまった。
(2) 装備
・雪渓が残っている場合は、バイルと軽アイゼンを持っていくべきだった。今回もバイルだけでも持っていたら、かなり楽だったと思う。バイルは草付、泥壁でも有効なのは知っているし。
・今年の北アルプスも雪渓が沢山残っていそうだ。フェルトシューズに付けられる、まともなアイゼンはあるのだろうか?調べてみよう。(昔沢登りしていた時も、結局アイゼンを持って行ったことはなかったが)
・フェルトシューズは、購入してから8年ぐらい、それから3年は使っていなくて、使いだしてからも、もう5年ぐらい経過している。表面の生地がはがれてしまっている。そろそろ替え時かもしれない。
(3) その他
・結局、沢の中で泊まらなかったのだが、25年前に買ったシュラフではつらいかもしれない。最近では、もっと軽量で水に強くて、性能がよいシュラフがありそうだ。要調査。
・荷物が濡れていて、シュラフも濡らしやすい。テント型のツェルトを用意していたのだが、それでもシュラフカバーを持って行った方がよいかもしれない。
・今回のように雨が降った後とか、濡れきった時など、絶対にたき火したい。私はたき火の達人ではないので、着火剤等、お助けツールも持って行った方がよさそうだ。
・iPhoneのGPSと山と高原の地図の組み合わせは、非常に有効だった。しかし、ビニル袋で防水していたiPhoneを取りだしては確認するのは、面倒だった。さらに、徐々にiPhoneが濡れだして、キーパッドが鈍くなってきて、益々時間がかかった。iPhoneの防水ケースを調べようと思う。
・2万5千の地図とiPhoneのGPSでよいアプリはあるのだろうか? 今回使ってみて、GPSの位置表示は最大で50mぐらいの誤差があった。高度差も±30mぐらいは常にあるようだ。となると、山と高原地図ぐらいで丁度よいのかもしれない。
(4) その他2
・足が疲れたのは仕方がない。歩いて歩いて、鍛え直していくしかないのだが、背筋も疲れてしまった。ザックの背負い方が悪いような気がする。パッキングの仕方(背中側が膨らまないようにとか)、ベルト類の調整、歩き方も見直した方がよいかもしれない。
(5) その他3(追記の追記)
・エスケープルート。
・下山して2日後、地図を再度眺めていて気が付いた。武能岳鞍部、丸山乗越から、白毛門岳へ抜けられたのではないか?ググってみると、残雪期に、ここを登っている記録が複数あった。結果論的ではあるが、宝川側へ降りたのはリスクが高かった。もちろん東黒沢を降りるのもリスクが高かった。結果的には宝川温泉へ降りて、事なきを得ているのだが、白毛門岳へ抜けるアイデアに気づくチャンスと時間はあった。気づいていれば、日のあるうちに土合橋Pまで戻れるチャンスはあったようだ。事前にエスケープルートを検討していれば、選択できていたと思う。
・事前に、いろいろなケースを想定して、沢へ入る前にエスケープルートを想像しておくことが大切だと感じた。

きん

by Climber-Kin | 2015-06-07 19:27 | 沢登り | Comments(11)
Commented by こーたろー at 2015-06-08 07:24 x
きんのアニキ お疲れ、無事で何より。冒険だな。
Commented by さち at 2015-06-08 07:45 x
6月は奥秩父の沢がいいですね。
泊まって薪も豊富で。
Commented by Climber-Kin at 2015-06-08 08:17
こーたろーの兄弟、沢登りは冒険なんだよ。だから楽しいぜ。夏の奥利根本谷とかも、こんなもんだったよ。久々でびびったぜ。しかし、下りはかなり怖かったな。装備持ってれば、そこまで、苦労しなかったんだけどな。
Commented by Climber-Kin at 2015-06-08 08:19
さちさん、ご無沙汰してます。奥秩父の易しくて楽しい沢、教えてください。
Commented by さち at 2015-06-08 18:41 x
あまり行ってないんですが、豆焼沢とかヌク沢遡行ナメラ沢下降とか入川金山沢(大水量)、東沢西俣沢とかです。
Commented by Climber-Kin at 2015-06-08 23:31
さちさん、豆焼沢行ってみたいですね。ナメラ沢を下降路にするのはよいかも。金山沢は調べてみます。あー、釜の沢かぁ。手前の沢とかは遡行してますが、行ってないです。小屋泊まりとかで、楽しい沢登りができるかも。情報ありがとうございます。
Commented by K名 at 2015-06-09 12:34 x
きんさん ご無沙汰です。奥秩父ですと北面の水晶谷とか古礼沢、井戸沢なんかも良かったですよ。大常木、小常木も楽しめました。30年位前ですが・・・。
Commented by Climber-Kin at 2015-06-09 18:01
K名さん、こちらこそ、ご無沙汰しております。
ご紹介ありがとうございます。調べてみます。
やはり、私と同様、20年以上前は沢登りしてたのですね。笑。
Commented by さち at 2015-06-10 07:13 x
きんさん、度々おじゃまします。
私は冬山の下着(化繊)を非常装備として最後まで濡らさないようにとっておきます。あとホッカイロです。アイゼンは靴につけるスパイクでは?昔はもっと頑丈なスパイクを売っていて、雪渓に最強だったのですが・・・
たき火は私は着火剤と小川山で拾った白樺の皮を持っていきます。これで最強です。
Commented by Climber-Kin at 2015-06-10 11:01
さちさん、ご助言ありがとうございます。ホッカイロですか。なるほど。冬に箱買いしたホッカイロが大量に余っているので、持っていきます。やはり、フェルトシューズだとつけられるのは簡易アイゼンですよね。白樺の皮がよいのですか。今度小川山で試してみます。
Commented by がろ at 2015-06-11 13:46 x
雪が残る沢登りとは!
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