今日の帰りは電車で座れた。隣には、なにやら鉄道写真が載った雑誌を見ているおじさんがいる。あごの回りには無精ひげがはえている。それでも私よりは若いのだろう。実は私も鉄道少年だった。それは、35年前ごろ。近くに、東海道線があって、明け方に、友達とよく、ブルートレインを見に行った。「あさかぜ」、「富士」。手を振ると車掌も手を振ってくれた。線路に耳をあててレールの音もよく聞いた。線路で遊んでいて通報されて、補導されたことも何度もあった。操車場は秘密基地。乗っていた貨車が連結されて、そのショックで吹っ飛んだり。貨車には、ワム、ワラ、ワサ、ワキと記されている。後ろの文字は、「ム」「ラ」「サ」「キ」の順で重くなっている。貨物列車が通るたびに、貨車を呼称したものだ。そのころ私の父親は、よくブルートレインを使って、九州方面へ行商へ出かけていた。電車に乗って、知らない街へ行ってみたい。行きたくても行けない。そんな憧れがオリジンにあって、鉄道が好きだったのだろう。今は時間さえあれば、世界中どこへでもいける。国内国外へたまに出張して、異国情緒を少し楽しむ。だけど、少年のころの胸がキュンとするあこがれはなくなってしまった。がんばれ、鉄道少年。その純粋な気持ちをずっと持っていてほしい。電車で行くクライミングもいいなぁ。青梅線。中央線。帰りはビールのみながら、その日のクラミングを思い返す。そんなクラミングも、たまには、いいですねぇ。
きん