ヘビークライマー”きん”のクライミング日記

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2012年 06月 05日

戦略(1)

戦略(ストラテジー)。似たような別の言葉に戦術(タクティクス)があります。戦略は、いかに効率的に、または効果的に目標に向かって前進するにはどうするのかと言う意味で、戦術とは、さらに具体的で、それぞれのルートの登り方、攻め方にあたると思います。目標はそれぞれの人で異なるので、当然その戦略は変わってくるはずです。今回は私の戦略的と言うと大げさですが、その観点での考えの一つを書き下してみました。

故G氏の「フリークライミング上達法」には、初級者と上級者の定義が書かれています。それは、クライミングを始めたばかりだから初級者だとか高グレードを登るベテランだから上級者というようには定義されていません。11の上級者は12の初級者なのです。これは、誰もがあるグレードでは上級者であっても、あるグレードでは初級者であるということです。12aを数便で完登でき、ときにはオンサイトできるクライマーも13aの完登には何日も何十便をかけないと達成できません。すなわち、12aのエキスパートは13aのビギナーなのです。同様に、13の上級者は14の初級者になります。クリスも15bを完登するために数100便のトライを重ねているのです。15bでは初級者なのです。我々は人それぞれ対峙するグレードは違っていても、限界グレード帯をトライする時は、日数と多数のトライが必要になるのは当然なのです。一方、G氏はピラミッド型になる完登ルートの積み上げを推奨しています。私が感じるには、その適切な比率は1:2だと少な過ぎて、1:3ぐらいではないかなぁと思いますが、それは人それぞれでしょう。1:3の比率だと次のようになります。

〇 ピラミッド型累積の例
13a -> 1本
12d -> 3本
12c -> 9本
12b -> 27本
12a -> 81本

何故ピラミッド型の累積が大切なのかと言うと、言葉では聞いていたり、知ってはいますが、では何故かとはあまり考えていないのではないでしょうか。強い人が言ったから? 有名な人がそうしているから? スクールで言われたから? 私が思うのは、それは、その難しさに対して、最小の力で登るためではないかなぁと思います。例えば、11bのセクションの後に2-3級ぐらいの核心。さらに11cぐらいの後半といった12ノーマルのルートを対象とした時、前半の11bのセクションを11bの難しさで登れないと疲れてしまって核心はこなせないのです。所謂下積みグレードを沢山持っているクライマーは易しいセクションを楽に登ることができるのです。ジムボルダー等で力はあるが累積経験が少ないクライマーは11bセクションを核心と同じぐらいの力を使って登ってしまいます。核心に到達した時にはもう余力がないため、完登できないのです。それでは、そのクライマーはいつまでたっても登れないのかと言うとそうではありません。所謂RPスキルと言うものがあります。RPという過程と経験、その技術を持っている人なら、その11bセクションを何度も登るたびに、より適したムーブを見つけ、より適した力で登れるようになっていきます。ピラミッド型累積によりどうなるかというと、より難しいルートをトライする時のトライ日数・便数を減らすことができるわけです。その究極は、コンペクライマーです。コンペは一発オンサイトトライですから、このムーブの蓄積(考えずして自然にムーブを起こせる)が大きいわけです。ですから、ある意味、ピラミッド型累積のゴール(目標)はオンサイトグレードを上げることなのだと思います。G氏は、そのグレードのエキスパートとはオンサイトできることと定義しています。そのグレードのエキスパートになることが目標だと述べています。一方で、G氏は、アクチオンダイレクトをRPするために、専用のクライミングボードを作り、その完登のために一冬トレーニングして遂には登ると言うこともしています。さて、我々一般クライマーは登る時間は限られています。登りたいルートもグレードもインフレしていて、月日とともに高くなっていく一方です(笑)。そのグレードを一本でも登れると次のグレードへと行きたくなります。ついついグレードインフレしてしまう傾向があります。それだけグレードは魅力的なわけです(人によりますが)。だけど、各グレードを1本づつでは、あまりに飛躍しすぎていて苦しみばかりを生みます。しかしながら、ピラミッド型累積も時間的な制約ともともとの目標からは乖離しているように感じます。そこで、私の提案は、ピラミッド型累積ではなく、中庸的な円柱型累積です。グレーゾーンのグレード帯を数本づつ登っていくようなイメージです。限界グレードでは、日数や便数が多少増えますが、登れるグレードも上げていけるのではないでしょうか。そして、このグレーゾーンですが、限界グレードから下2つぐらいは、所謂お買い得・お買い損、得意・不得意、サイズが合う・合わない。等々、登れるルートと登れないルートとが存在します。そういう観点から、そのグレードを登れる、登れた12aクライマーとか12cクライマーとか13aクライマーとかは、そのグレードを10本ぐらい登って、そう言えるのかなぁと私は思います。

〇 円柱型累積の例
13a -> 10本
12d -> 10本
12c -> 10本
12b -> 10本
12a -> 10本

これからも、まだまだ伸びていけるクライミング暦が短い人や若い人。オンサイトこそ至高のクライミングと思う方はピラミッド型累積をお奨めしますが、フィジカルに飽和してしまっているクライマー(5年もやっていれば、殆どの人はフィジカルに飽和するでしょう)は、円柱型累積でよいのではないかと思うのです。フィジカルに飽和してるなら、どうやって伸ばすかって、それはテクニックを磨くしかないでしょう(笑)。それはムーブの解析能力を上げることであり、また、戦略もあり、戦術があり、単にうまくなることです。それと、フィジカルには12台ぐらい登れちゃう人が11台をいくら登っても積み上げにはならないでしょう。だって、11台なら力づくで登っちゃってハイ終わりでしょう。それは適切なムーブの蓄積にはなりません(笑)。先にフィジカルな力をつけてしまった人は、もうピラミッド型累積は意味がないように思います。ついでに、ジムでは高いグレードを登れているのに、外ではあまり登れない人。それは、テクニカルに下手なだけです。クライマーはみな優しいので、それを慣れとか経験だよとか言いますが、それこそが技術です。ようは下手なのです。下手だから登れないってのは何だか認めたくないですよね。力がないから登れないと言った方がまだプライド的に許せます。一方、外では登れるけどジムでは登れない人。それはテクニカルにはうまいけど、それと比べてフィジカルに弱いだけです。真摯に現実を受けとめ、前向きに精進することが唯一の上達の道だと思います。話をタイトルに戻しますが、クライミング暦が長く、もうフィジカルに飽和しちゃっている私は、形振りかまわず、登りたいルートへ通い、しつこくトライして、よいルートを一本でも多く登りたいです。それと、どんなルートでもスタスタとムーブを流して登ってると、仕事してるみたいだって思われたりします。だけど、2-3日もそのルートをトライすれば殆どのムーブは自動化できちゃいます。ジムボルダーだって、3便も出せば、核心までは自動化できちゃいます。ホールド覚えるだけが自動化ではありません。流せるムーブをつくり、先行動作により流れるようにムーブをこなす。そうしないと重量系速筋クライマーは完登できないのです。そこには初動負荷理論があって、スムーズな登り。それは運動の基本原理だと思います。そして、それは私の戦術であり、技術だと私は思います。だから、こんな私でも「おいしいよ」とか「カリスマ」の持久系ルートを完登できたのだと信じてます。これも、クライミングとどう対峙するかの個人の考え方、捉え方の違いですが。登れて当たり前のルートを登るのも大切ですが、登れるかもしれない登れないかもしれない。そんなグレーゾーンなルートと向き合うのも大切な経験になるでしょう。私は、形振りかまわず、登りたいルートを一本づつ登っていきたいです。それだけです。あっ、もう一つ飽和クライマーにやることがありました。メンタルマネージメントです。フィジカルにもテクニカルにも、もう登れるはずなのに登れない。その逆のチャンスを逃さない勝負強さ。もうメンタル以外の要素はありません。リンヒル曰く「クライミングは自分の力を出し切ること。」それが一番難しいのです。これが次回のテーマです。今直面している課題です(笑)。

きん

by Climber-Kin | 2012-06-05 22:04 | クライミングの研究 | Comments(4)
Commented by こーたろー at 2012-06-06 07:30 x
きんのアニキ おいらこの数年間「力を抜く」クライミングしかしてねぇもんだから、弱ぇフィジカルがさらに弱くなっちまったよ。具体的には「痩せましたね」ってぇ会う人会う人に言われるくらい肩周りと背中の筋肉がペラペラにしぼんじまった。
少しでも筋肉量を復活しようってぇのと捻り瞬発系の動きを少しでも習得できればってぇ魂胆で岳のところのボル強に通い直してるってぇわけさ。
それと心技体の心は多便クライマーにとっちゃぁ大きな要素だよな。強ぇクライマーのように「ココを抜けたら必ず」完登してぇもんだ。
それには持久力も必要かな?、、、まだまだクライミングを探求しなきゃぁなんねぇなぁ。
じゃ、またな。
Commented by Climber-Kin at 2012-06-06 09:25
こーたろーの兄弟、フィジカル、テクニカル、メンタル。まさしく、心技体だな。平日のジムボルダーで強度の刺激を体へ与えることが、フィジカルに強くなることと持久力アップ(酸素借量増大)への近道だぜ。ボル強継続だぜ。
Commented by スーさん at 2012-06-06 22:54 x
フィジカル強化の必要性を感じているところです。ボルダーですね。ところで、中里の情報をありがとうございます。フィジカル強化をはかりつつ、トライしようと思います。
Commented by Climber-Kin at 2012-06-06 23:48
スーさん、どうもです。フィジカルな速筋の持久力は、酸素借量と乳酸排除能力です。厳しいムーブが続くルートは前者のインパクトが多きく、登攀時間5分を超えるルートでは後者に効果が出てくるように思います。前者に関しては、筋肉への強度の刺激のみが効果があるようです。後者は水泳した方が効率的のような気がするのですが。ロクスト最新号ではジャックさんが別のアプローチを?


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