ヘビークライマー”きん”のクライミング日記

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2019年 08月 17日

2019年8月10日~15日、黒部川上ノ廊下(扇沢駅~黒部湖~奥黒部ヒュッテ~上ノ廊下~薬師沢小屋~雲ノ平山荘~北アルプス裏銀座~野口五郎小屋~烏帽子小屋~高瀬ダム)

 昨年に続き、黒部川・上ノ廊下から北アルプスへ入り、北アルプスを縦走する計画を立てていました。当初は、上ノ廊下~大東新道~高天原~雲ノ平小屋~双六小屋~西鎌尾根~槍ヶ岳小屋・槍ヶ岳~上高地という壮大な計画を経てていたのです。しかし、大東新道まで到達して見上げた、その登山道が上がるE沢は、疲れきった自分達には、とてもきつそうで、結局、薬師沢小屋で泊まり、雲ノ平山荘へ上がることにしたのでした。13日の雲ノ平山荘で、偶然雲ノ平行を計画していて、折立からアプローチしてくるM下家とあわよくば落ち合うことにしていました。両パーティとも無事13日に雲ノ平山荘で再会することができました。気になる台風10号の進路から木曜日中の下山が無難であろうと、計画をかえて、野口五郎小屋から烏帽子小屋経由で木曜日のうちに高瀬ダムへ下山する計画へ変更しました。
 8/9(金)のうちに扇沢入りしました。4時間ぐらいは睡眠を取ることができました。
 8/10(土)、今年は昨年の反省を生かして、事前にパッキングをしておいたお陰で、起床後すぐに出発することができて、臨時始発の06:30の電気バス(トロリーバスはなくなり、今年から電気バスになった)に乗ることができました。針ノ木雪渓は全く雪がありませんでした。もしかしたら、渇水かも?と期待したのですが、それは、後ほど期待はずれだったことがわかるのでした。今年は昨年より体調がよかったせいか、少しだけ楽にアプローチできたようです。今年も奥黒部ヒュッテのお風呂をもらって体を緩めることができました。上ノ廊下入りするパーティが多いようです。8パーティは登山届出していったと受付で聞きました。そろそろ、晩御飯でも食べようかとしていると、緊急ヘリがやってくるので、テントを片付けるように奥黒部ヒュッテのスタッフから指示されました。下の黒ビンガで腕を骨折してしまったそうです。ヘリは着陸せず、ホバーリングで怪我人と、そのパートナーをつり上げて去っていきました。気を付けよう。気持ちが引き締まりました。
 8/11(日)、入渓です。あっ、去年より水量が多い! 前回の増水敗退して再チャレンジで来ているパーティは、水が少ないと言っていましたが、増水で敗退した際の水量と比較しているので、当てにはならないと思っていたのですが、やはり、今シーズンの他の沢と同様で上ノ廊下も増水気味でした。まずは、最初の難所の「下の黒ビンガ」の右岸から左岸への渡渉です。昨年は簡単に突破できたのですが、今年は増水分だけ沢幅が広く15mのフローティングロープの長さが不足して、ロープに引っ張られて、1回目の泳ぎは失敗してしまいました。2回目は、ロープが足りなくならないように、パートナーさまに少し沢の中に入ってもらい、再びザックを背負って泳ぎだしました。しかし、またしても、フローティングロープで引っ張られました。だけど、今度はなんと足がつくところまでたどり着いたのです。ぎりぎりでフローティングロープに引っ張られて、岸に上がれません。流されそうでした。あわてて、パートナーにすぐにこいと指示して、なんとか岸に上がることができました。すぐに上流方向へ歩いて、流されていくパートナーさまを釣り上げました。ザックを背負ったまま、突破はできたものの、疲れました。体は冷えきりました。ガクガク震えて歩けません。少しの間、陽に当たって体が温かくなるのを待っていました。最初から40mロープを使って、空身で渡って、ザックとパートナーさまをひっぱればよかったと後悔したのでした。
 すると、単独の男性が下ってきました。口元のタルの核心は単独では厳しく、あきらめるそうです。この水量だと、口元のタルの核心は相当難しいだろう。我々も敗退するかもしれない。そんな不安を持ちながら、最初の核心、口元のタルのゴルジュへ向かったのでした。大阪から来ている、とても沢馴れた5人のパーティが突破中でした。若者が右岸をへつって、突破できたようです。歓喜の雄叫びが聞こえてきました。これまで、この核心は、足の着く間は沢の中央を進み、足がつかなくなったところで、左岸へ移り、右壁をへつって突破してきたのですが、今年は沢の真ん中はゴーゴーと水が流れ、左岸へ移れる感じは全くありませんでした。私も左壁をそのまま、へつってみることにしました。ザックは置いて、空身でトライしました。足は全くつきませんが、最初のうちは、なんとかホールドがあるので、進むことができました。しかし、あと少しというところで、ホールドがなくなりました。最後のホールドから、次のホールドを一生懸命探すのですが、流されそうになり、また、最後のホールドへ戻ることを何度も繰り返しました。まずい!このままだと、力尽きる。次のホールドを探しに行った時、足が何かを触りました。とっさに、その岩に足ジャムすることができました。その水中の岩に乗り込み、ギリギリで突破することができました。自分のザックとパートナーを引き上げました。激流に逆らって、引っ張り上げるので全力でロープを引きます。その都度、前腕がパンプしてしまいます。その後も、ゴルジュ帯の中での渡渉があり、体力をかなり奪われました。この難関を超えると、広河原帯が続き、少し安堵できました。とはいえ、半分流されながら、バランス崩したら、そのまま流されてしまうような緊張する渡渉は、体も精神心も疲労させられます。口元のタルの核心を突破できれば、上の黒ビンガまで行くことができます。上の黒ビンガは相変わらず素晴らしい景色です。絶景を見ながら大休止しました。次の核心は金作谷先のS字ゴルジュです。
 金作谷には、まだ5mぐらいの雪渓がびっしり残っていました。これでは水量が多いはずです。金作谷出合左側の高台で、4人パーティがビバーグするようです。我々は、もう一つ核心を超えてからビバーグします。その2つ目の核心の金作谷S字状ゴルジュも昨年の様相とは違っていました。とりあえず、昨年と同様にザックを背負って、フローティングロープを引いて右壁を進んでみましたが、すぐに足がつかなくなり、戻って来ました。ザックを置いて、40mロープを引いて空身でトライしました。アイスバイルを使って、へつりました。しかし、水流が強いです。ホールドがありません。ここまで来て敗退か?と頭をよぎりました。もがいていると左前の水中に足が届きそうな岩を見つけました。少し先から、真ん中が浅瀬になっていることがわかりました。よかった! 20mほどロープを引いて、ロープを置けそうな岩をみつけて、自分のザックとパートナーさまを引き上げます。そこから、再び足のつかないヘツリと泳ぎで見覚えのある岩に上がります。右岸へ渡るポイントです。ハーケンが打ってあります。ザックを上げて、ロープを整理して、対岸に向かって飛び込みます。ジャンプして流芯を超えます。頭の先まで水に沈みましたが、すぐに浮かんで対岸へ泳ぎつきました。あ~、よかった。少しだけ緊張が続くゴルジュ帯を超えたところで、大阪のエキスパート5人パーティがビバーグの準備をしていました。挨拶をして、我々は、その先200mほど行ったところにある、いつものビバーグ地に泊まれました。
 8/12(月)、まだ、3つ目の核心の「スゴの淵」が残っています。昨年は簡単に左岸へ移れましたが、今年は水が多いから苦戦するかもと、心配で夜中に何度も目を覚ましてしまいました。やはり、水量をみて、空身で左岸へ移ることにしました。雪渓のつまった金作谷を超えると、少しだけ増水加減が減ったような感じでした。スラブのトラバースもゴム底シューズなら安心です。昨年は雨で、沢中の2日目に増水して大変だったので、今年はむしろ後半は昨年より易しく感じました。スゴの淵から先は、ずっと左岸ぞいが正解のようです。昨年は、途中から右岸へ渡って、増水で高い場所に追い詰められて苦戦したのですが、左岸で通した方が全然早かったです。最後の5mの懸垂下降を下ると、大東新道を登る登山パーティが歩いていました。大東新道が大きくそれて、再び沢沿いになったところで、遡行を終了し、大東新道で薬師沢小屋へ向かいました。
 増水で敗退して再挑戦のパーティにとっては、水量が少ないと感じるのかもしれませんが、今年の水量は多めでした。薬師沢小屋でも、水量多いみたいですと言われました。25年前に遡行した時と同じぐらいかなぁと思います。前回、前々回よりも、かなり難しかったのですが、その分、充実できました。前回、前々回は、黒部川上ノ廊下を遡行してから、赤木沢、奥ノ廊下を上がりました。そして、今年は登山道で雲ノ平へ向かいます。
 翌朝、毎年落ちていく体力を感じながら、また「上ノ廊下」へ来られるかなぁ?と しみじみと上ノ廊下を振り返りながら、雲ノ平へ向かったのでした。

〇 2019年の「上の黒ビンガ」
・今年は天気がよかったです。明るい!
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〇 装備とコースタイム
・メンバー、パートナーさま、きん、計2名。
・共同装備、8mm×40mロープ、15mフローティングロープ、テープ、カラビナ、カム小さめ5個、ハーケン、タープ、ツェルト、着火剤。
・個人装備、ライフジャケット、アイスハンマー、雨具、着替え、ハーネス等々。
・コース時間
- 8/10(土)(アプローチ)
5:40、扇沢駅切符売り場(始発の40分前から販売だが、既に長蛇の列)
6:30、扇沢駅発(電気バス)
6:45、黒部湖着
11:10、平の小屋着
12:10、平の渡し(黒四側)出発
12:20、平の渡し(針の木側)出発
14:30、奥黒部ヒュッテ・テント場着
- 8/11(日)
5:30、奥黒部ヒュッテ・テント場出発
15:30、金作谷出合先1692mの出合手前のビバーグ地着
- 8/12(月)
5:40、ビバーグ地出発
14:00、薬師沢小屋着

〇 扇沢駅切符売り場
・毎度の長蛇の列です。
・臨時始発便は6:30で、その40分前から当日券発売開始です。5:40には来たのですが、既に30mは並んでました。
・始発便に乗れました。
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〇 黒四ダムの放水
・観光放水らしいです。
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〇 ロッジクロヨン
・もう1時間も歩いたのに、ロッジクロヨンが、まだあんな近くにあります。そうなんです、湖岸道はいりくんでいるので、歩いても歩いても、なかなか進みません。
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〇 黒部湖
・ダム湖の水は少なそう。しかし、ダム湖の水量と現在の沢の水量とは関係ない。
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〇 平の渡し
・2艘使っていました。我々は2番目の舟だったので、途中で戻って来る一艘目とすれ違いました。
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〇 見え始めた上ノ廊下
・奥に見えるのは、五色ヶ原かしら?方向的に違う。スゴの頭?
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〇 奥黒部ヒュッテに到着
・行動時間が意外と長い初日、疲れました。さらに入渓して、沢を少し上がれる時間はあったのですが、ここには、ビールとお風呂があるので...
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〇 2日目、出発
・先行の東京パーティ。下の黒ビンガで抜きましたが、その後会いませんでした。
・最初は平凡な河原歩きになります。しかし、今年は少し水が多く、このあたりの渡渉も油断できません。
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〇 見えてきた「下の黒ビンガ」
・これが見えてくると、最初の核心が近くです。
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〇 下の黒ビンガの渡渉
・一発目、フローティングロープに引っ張られて、岸に届かず流される。必死に泳いで、失敗すると徒労感に襲われて、メンタル的にすごく消耗します。。
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〇 第1の核心、口元のタルのゴルジュ
・昨年のその前は対岸に渡って、へつって突破したのですが、今年は対岸に渡るのは無理そうです。
・左側をへつって突破しました。
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・ぎりぎりセーフ! 突破できました。あと10cmも増水してたら、無理でした。
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〇 「口元のタル」先の安堵
・「口元のタル」の最初の核心を過ぎると、しばし、安堵できます。
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〇 上の黒ビンガ
・今年もここまで来られました。しかし、まだ、ゴルジュが2つ残っています。緊張は緩みません。
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〇 続く癒しのセクション
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〇 金作谷
・随分、雪渓が残っていました。水量が多いはずですね。
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〇 見えてきた金作谷先S字ゴルジュ
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〇 第2の核心、金作谷S字ゴルジュ
・まずは、ザックおろさず挑戦してみるも返される。
・写真見ると、もしかしたら、最初から真ん中いけば、容易だったのかも?
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・今度は空身で。抜けられました。
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・前半部分抜けられました。
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・さらに進みます。
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・対岸へわたります。飛び込みました。ドボン!
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〇 まだ、泳ぐのか
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〇 ビバーグ地到着
・前回、前々回と同じビバーグ地です。
・このすぐ先にもビバーグ適地があります。
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〇 3日目、出発
・まだ、3つ目の核心の「スゴの淵」が残っています。すぐそこです。緊張の出発です。
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〇 スゴの淵
・やはり、水が多そうです。念のため、空身で取り付きました。
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・対岸のヌルヌルホールドへ泳ぎます。
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・ビレイには、カムが良く効きます。
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・ザックとパートナーさまを引っ張ります。
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・スラブは、ゴム底シューズなら難しくありません。
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・トラバースが続きます。
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・しばらく左岸をトラバース。
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・ずっと左岸です。
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・ここも左岸です。前回は、右岸に渡ってしまって、高い所へ追い詰められて、降りるのに苦労しました。
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〇 岩苔小谷の先の小ゴルジュ帯
・流れが少し緩やかになり、ここまでくれば、難しくありません。
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〇 大阪のエキスパート5人パーティ
・殆どロープを出していませんでした。しかも、トレランのように凄い速さで進んでました。
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〇 立石奇岩
・登りたーいという気持ちになる奇岩ではなく、本当に、変な形という意味で、奇岩です。
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〇 大東新道と合流
・ここまで来れば、もう安心です。
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〇 薬師沢小屋に到着
・小屋を見つけると、ほっとします。今年も突破できました。
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きん


by Climber-Kin | 2019-08-17 10:23 | 沢登り | Comments(2)
Commented by こーたろー at 2019-08-18 12:25 x
きんのアニキ お疲れ。
記事読ませてもらったぜ。
最近オールドアイがきついからブラウザの文字表示をけっこう拡大したぜ。
ひたすら泳いでるみてぇで体力よくもつなぁ、関心するぜ。
台風シーズンは気になるけどもうしばらく沢かい?

じゃ、またな。
Commented by Climber-Kin at 2019-08-18 20:16
こーたろーの兄弟、難所は全て泳いで突破! それが、黒部川・上ノ廊下だぜ。
今日から岩に復帰したよ。しかし、午前中で終了。お昼に、にわか雨の洗礼を浴びたぜ。


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