ヘビークライマー”きん”のクライミング日記

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2005年 10月 15日

クライミングにおけるメンタル的な要素について


私も恐くてルートが登れない時期があった。12年前に11台前半をそれなりにRPしたのだが、その後、間があいてしまった後、恐くて登れない期間が長く続いた。今はなんとか克服して、それなりのグレードが登れるようになってきた。人工壁だと登れるけど、自然岩ルートだとなかなか登れないという人が多いと思う。この現象についてメンタル的な要素を含めたクライミング能力とは何かを自分なりに考えて、まとめてみた。

”自然岩ルートの各セクションのムーブグレードについて ”の記事で、FJさんがコメントした。
「プラチナムくらいのボルト間隔だと、恐怖心もあまり無いのですが、小川山のスラブで足下2mがボルトとかなると、出来るムーブも出来なくなります・・・精神的な要素もかなり大きいと思われます。他にもレギュラー。同じホールド、傾斜が人工壁にあればすっと登れるような気もするのですが・・・」

殆どのクライマーが同じような感覚、経験を持っていることだと思う。この”精神的な要素”のクライミング能力への影響を私なりに仮説をたててみた。クライミング能力とは、

クライミング能力 = ムーブ解析能力 (*1) 
         × ムーブ実行能力 (*2)
         × ホールド保持力 (*3)
         × メンタル的な要素(*4)
         × 戦術的な要素  (*5)

と仮定をたててみる。ここで重要なのは、プラスでなく。各要素の掛け算であるところである。ここでの各能力の内容は以下の通りである。
(*1) ムーブ解析能力
最適なムーブを見つけ出す能力。体験したムーブ量に大きく依存する。既に学習しているムーブ記憶から引き出す。さらには、経験しているムーブから新たなムーブを連想する想像力を意味する。この能力が高いほど、ムーブを固めるまでのトライ回数が少なくなるし、オンサイト時は、自然にムーブが出せる、または、瞬時に連想できる必要がある。ジムでも、向上させることができるが、やはり、目的の岩質、岩場でいろいろなムーブの成功体験を積み上げることにより、記憶を多くもとことができる。またこのムーブ記憶は、自分が実行できる学習されたムーブである必要がある。学習されたムーブとは、自動化されていることを意味する。

(*2) ムーブ実行能力
直面しているプロブレムを解決するために、行おうとしているムーブを間違えず実行する能力。パワーもここに含まれる。有り余るパワーがあれば、少々最適なムーブでなくても実現できるわけである。パワーがなくても、最小の力でバランスよく登り解決することもできる。極超エッジへの乗り込みも場合によっては必要である。困難なムーブをこなすためのテクニカル要素とパワー要素、プロブレムごとに必要な要素が依存する。ムーブがわかっていても、それに必要な保持力が伴わなければ、やはり登ることができない。この能力はジム、自然岩どちらでも向上させることは可能である。特にパワーと保持力はジムボルダーの方が向上させることができる。ただし、花崗岩のスメアリングや立体的なバランスはジムではなかなか学習することができない。

(*3) 持久力
持久力とは、長時間フォールせずにトライしつづけられる能力と考えると、2つの種類があると考える。
i) 絶対的な筋肉持久力
ii) バランス、手以外の筋肉の活用など、前腕パワーをセーブするためのテクニカルな面
パンプとは筋肉中の乳酸が増えて、筋肉活動を低下させることであるから、いかに筋肉負荷率を下げて、いかに乳酸量を減らすかがポイントである。よって、最大筋肉パワーが大きいほど有利である。乳酸分解能力(筋肉内の毛細血管)も高い方が有利である。筋肉内の毛細血管は継続したトレーニングにより発達する。トレーニングをサボると毛細血管がなくなってしまい乳酸をためやすくなってしまう。また、大量な乳酸を筋肉内に長時間保持されると筋肉にトラウマを作ってしまい。短期間での回復が望めなくなってしまう。久々にクライミングをして一本で終わってしまうという経験は誰もが持っているのではないだろうか。前腕が疲れない洗練されたムーブで登れるということも持久力を向上させることでもある。また、長いクライミングルートでは、もっとも重要な要素の一つであろう。

(*4) メンタル的な要素
取る値は、0~1になる。その他の能力がいかに高くても、フォールに対する恐怖心があるとムーブを実行することができない。ビレイヤに対する不安や危険的要因に対する不安などにより、本来の能力を極めて限定してしまうことが多い。即ち、どんなにテクニカルな技術力やパワーを持っていても、メンタル的NGの場合、全く登れないということを意味している。クライミングは「精神的な要素もかなり大きい」でなく、「精神的な要素が殆どを占める」または「精神的なマイナス要素は全てをだいなしにしてしまう可能性がある」というところがポイントだと思う。もう少し具体的な表現をすると、いわゆる見切りができるかどうかで、見切りができないと怖くて何もできなくなってしまう。あのホールドを持って、足をあそこへ上げれば、このぐらいのバランスになるはずと言ったムーブ的な見切りとどのような状態になるかといった予測ができることが重要である。あそこで落ちたらこう戻ればよくて、最悪フォールしても、あそこへ落ちるから大丈夫だろうという危険要素の見切りも必要だ。そして、たくさんの成功体験がないと自分に自身が持てず、見切ることができない。また、モチベーションもこのメンタル要素に含まれる。モチベーションがないと筋動員数が減りパワーを出すことができない。

(*5) 戦術的な要素
詳細は後日。


このようにそれぞれの要素を検討していくと、クライミング能力とは、全ての要素の乗算ではないだろうか。そして、重要なことは、メンタル要素は全ての要素に対して最も大きな影響力を持ち、クライミング能力を低下させる最大の要因ということである。恐くて登れないというメンタル的な要素とクライミング能力と別に考えている人が多いと思う。そうやって考えたいのもよくわかる。「私は恐がりだから下手なのだ」とは考えたくない。しかし、実は、クライミング能力を決めてしまっている要素はメンタル的な要素なのである。何気ないムーブの中にも、メンタル要素による影響があり、それは、無意識に力が入っていたりする。バランスの悪いホールドを力づくで登ってしまい、よくないムーブを学習してしまったり、テンションばかりで、せっかくのムーブ経験をだいなしにしてしまったりと、極めて弊害が多い。それでは、それを克服するには、どうすればよいのか。やはり、それは成功経験を積み重ねていくしかないと思う。人によっては、いきなり11台の成功体験から積んでいける人もいるが、それはごく一部の人であって、殆どの人は、恐くないルートから地道にムーブ経験とともに積んでいくしかないと思う。さらに、大フォールの経験や怪我とかのトラウマは、さらにメンタル的なマイナス要因となっていく。それらの経験をリカバリするために、また、さらに多くの経験をつまなければならない。メンタル的な低下要因をいかに排除していくかというのが自然岩でのルートクライミングの大きなポイントだと思う。恐怖体験や失敗経験はさらにそのマイナス要因を大きくするので、成功経験をいかにつんでいくかが、唯一の解決方法だと思う。そして、私のRPへのプロセスの第1フェーズは、ルートに対する恐怖心を取ることに注力している。恐怖のランナウト区間はどのくらいの力があれば通過できるかを見積もる。核心ムーブの困難度など確認し未知数を減らしていく。第1フェーズの目的は、恐怖心をとり、自分の力でトップアウトすることである。そして第2フェーズが始まるわけである。過度な恐怖心があっては、絶対にRPなどできるわけがない。一番大きなボトルネックから解決していくというのが、次のステップへの第一歩だと思う。人工壁だと登れるけど、自然岩ルートだとなかなか登れないという人へのメッセージは、最大の弊害である恐怖心を排除するためにはどうすればよいか、もっと考え、そのためにもっとエネルギーを使う必要があるのではないかということである。

Heavy Climber-Kin

P.S.
大して登れもしないのに、えらそうに物申してしまいました。同じような経験を持っていて、未だにルートが怖い私からのメッセージです。

by Climber-Kin | 2005-10-15 21:34 | クライミングの研究 | Comments(4)
Commented by 小熊 at 2005-10-17 13:02 x
 恐怖心というのは大きいですね、保持する「自信」がないと距離が十分でもクリップの動作に入れないです。
 自分でも何が原因かわかりませんが、同じ岩場・同じ課題で怖い時と怖くないときがあります。怖くないときは動作がスムーズでそれなりに登れるのですが、怖いと何もできないですね。
Commented by Climber-Kin at 2005-10-17 13:59
ちょっとした足の滑りとかでで、それ以降、めちゃくちゃ手に力入ったりすることはありますね。濡れた石灰岩とかは、擬似体験トレーニングとして有効だったりして。まぁ現実は、さらに恐怖心が大きくなり話にならないでしょうけど。
小熊さんの場合、別の要因が一つ思い当たります。次回、お会いした時にでも。
それと、こう言ったら失礼かもしれませんが、小熊さんは、かなり重症なので、あるルートに対して、TRでリハーサルして恐怖心を取り除いてからRPトライするというプロセスをしばらく続けてみてはどうですか。その際の注意事項は、必ずリードを意識して登ること。TRをよいことにラインをはずしたり、クリップポイントを無視して登ると、リードした時にやはり怖い思いをするので意味がありませんから。個人的には、そういうアプローチは、あまり好きではないのですが、それは自立を目指すレベルになってからの話でしょうね。
Commented by 小熊 at 2005-10-19 08:45 x
 いろいろやってみます。ジム以外では10台もあんまり登って(登れて?)ません。トライ回数も圧倒的に足りないようです。
 お会いしたときにはよろしくお願いします。
Commented by Climber-Kin at 2005-10-19 12:57
小熊さん、
まずは、フリークライミング上達法、ロッククライミングパフォーマンス、クラマーズボディとか読んでみてはどうですか。どう解釈するかは個人の問題ですが、ヒントはたくさん書いてあります。最初は意味がわからないかもしれませんが(フリークライミング上達法は特に)、少しづつ意味がわかるようになってきます。後から出された著書ほど、わかりやすくなっていますが。フリークライミング上達法がリファレンスになっています。


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